世論調査では主に、2024年秋に実施されるであろう次期総選挙では労働党が勝利すると予想されており、主な争点は、労働党が単独過半数を獲得するか、あるいは獲得できなかった場合、おそらく自由民主党と連立政権を組むかということです。

最近まで、労働党政権が多数派を形成した場合、雇用法に関する政策を含め、実際にどのような政策をとるのかほとんど示されていませんでしたが、現在、労働党のアンジェラ・レイナー副党首が労働党の意向を説明しています。彼女は労働党内における労働者の権利に関する議題の責任者であり、9月12日に行われた労働組合会議(TUC)での演説で、労働党が政権発足後100日以内に雇用権利法案を提出することを「鉄の約束」として示しました。 今週のニュースレターでは彼女が語った法案の内容を考察します。

政策について

まずは、レイナーの聴衆を考慮しなければなりません。彼女は、国内の労働組合が毎年集まる労働組合会議(TUC)で演説を行いました。労働党は労働組合によって結成され、労働組合から資金援助を受けているため、選挙前の(おそらく最後となる)労働組合会議(TUC)で、労働組合が歓迎するような政策を約束することが重要でした。

労働党はその主要政策を『働く人々のためのニューディール』と呼んでおり、レイナーは「普通の働く人々の生活を一変させるだろう。労働は最終的に実を結び、権利は適切に行使され、そして重要なのは、社会における労働組合の役割を強化することである。」と述べています。

具体的に労働組合のために何を行うのか

レイナーは、次の5つの方法で労働組合の立場を強化すると約束しました。

•    保守党政権が導入したストライキ規制の緩和

これは、2016年労働組合法(Trade Union Act 2016)と2023年ストライキ法(Strikes (Minimum Service Levels) Act 2023)を廃止することによって行われます。2016年労働組合法は、労働組合がいつ、どのように争議行為を行うかについて新たな制限を課しました。これには、争議行為のための投票の結果が法的に有効となるためには50%の投票率を集めなければならないという要件や、「重要な」公共サービスの提供に主に関わる役割を担っている業種は、投票資格を有する全労働者の中で40%の支持率を達成しなければならないという要件が含まれます。 2023年ストライキ法により、主要な公共サービスについては、ストライキ中であっても最低限のサービスを提供することが労働組合に義務付けられています。

•    労働組合に新たに法的な「職場への合理的なアクセス権」を付与

これにより、労働組合にとっては、勧誘や経済全般にわたる労働者の権利を代弁することが容易となります。

•    争議行為などの職場投票(workplace balloting)における電子投票を許可

保守党が導入した2016年労働組合法により、現在、投票は郵送で行われていますが、そのために投票への参加率が低くなっています。職場投票の電子化は、ストライキや法定組合承認をめぐる投票への参加率を高め、投票結果に組合員全体の意見をより反映させるために労働党が検討している方法です。保守党が職場投票を嫌うのは、職場投票により、ストライキや承認に肯定的な結果になりやすいと考えるためです。

•    『ギグ・エコノミー』やリモート労働者が労働組合を通じて有意義に組織化できるよう、法定承認プロセスを簡素化

近年、UberやDeliverooのような企業で、ギグ・エコノミーにおける労働組合の組織化の試みが活発化しています。労働党はこれを支援する意向を示していますが、これに関する詳細は明らかにされませんでした。

•    企業レベル、及び業界レベルでの団体交渉の強化

労働党がどのようにこれを行うかについての詳細は明らかにされませんでした。個々の企業レベルでの団体交渉には、まず組合が「承認」されていることが必要であるため、これは単に強制承認に対する組合の権利強化に向けた動きかもしれません。英国における「業界別」団体交渉は、実際には公共部門にのみ適用されるものであって、組合は全国の医療・教育サービスを代表する団体と交渉しています。

労働者の権利はどうなるのか

個々の労働者の権利についても変更が予定されています。レイナーは、「一世代で最大の労働者の権利に関するアップグレード」になると主張しています。

主張の信憑性

レイナーは、労働党は以下のことを行うと述べました。

•    「人々が実際に生活可能な適切な生活賃金」の導入

これは現行レート(時給10.42ポンド)のインフレ率を上回るレートで引き上げることを意味します。その額は、その時々の経済状況によりますが。 国民生活賃金(National Living Wage)は保守党が23歳以上を対象に導入したもので、労働党が1999年に初めて導入した国民最低賃金(National Minimum Wage)よりも高いものです。もっとも、労働党は固定のレートを決定するつもりはなく、「適切な生活賃金」という言葉にはさまざまな解釈の余地があることは明らかです。

•    法定傷病手当を低賃金労働者へも拡大

現実には、これは多くの労働者には影響しませんが、非常に低賃金の労働者が、すでに控え目の法定制度から除外されていることは、一般に異常とみなされています。

•    組合労働者の「ブラックリスト化」を禁止する法律を強化

組合労働者の「ブラックリスト化」を禁止する法律が強化され、ブラックリスト化のための予測技術の使用が禁止されます。

•    「男女間の賃金格差をなくすために、より早く、より迅速に行動する」

これはかなり曖昧な発表で、実際にどのようにこれを達成するのかの詳細は不明であり、おそらく最も非現実的な約束として、「職場におけるセクシャル・ハラスメントに取り組む」としています。また、「メンタルヘルスを身体的な健康と同等にする」としていますが、どんな理由であれ、病気休暇には傷病手当金が支払われ、障がい者差別に関しては、身体的なものだけでなく精神的なものも障がいになりえます。

その他の約束

レイナーは『初日からの基本的な権利(day one basic rights)』という、聴講者にとって聞こえはいいものの、ややあいまいな約束をしました。 差別を受けない権利など、すでに多くの『入社日からの権利』があります。しかし、労働組合が「入社日からの権利」という場合、たいていの場合は通常の不公正解雇に対する権利を意味し、これは現在勤続年数が2年を超えた後、付与されています。『入社日からの権利』は、1997年に前労働党政権が誕生する以前から労働組合が要求していたものですが、労働党は単に権利行使可能な期間を2年から1年に短縮したに過ぎませんでした。2年という期間は再び短縮される可能性が高いですが、労働党が雇用開始日から完全な不公正解雇に対する権利を認めるのであれば、それは驚くべきことです。ビジネス界の利害関係者は、これに反対するロビー活動を展開するでしょう。

しかし、報道ではほとんど取り上げられていない2つの変更案があり、それが実際に実施されれば、実に広範囲に及ぶと私たちは考えています。それは以下の通りです。

•    ゼロ時間契約の廃止

•    「解雇と再雇用」の禁止

具体的な政策は誰にもわかりませんが、この2つの政策が実施されれば、多くの企業にとって大きな変化をもたらす可能性があります。ゼロ時間契約が廃止されるか、あるいは厳しく制限されることになれば、多くの雇用主は変則的な勤務の取り決めの柔軟性を大幅に失うことになるでしょう。 

「解雇と再雇用」が禁止されれば、最終的には唯一の方法である、契約を打ち切り、修正された条件で再契約するという方法で、雇用主が強制的に契約条件を変更するということはできなくなります。もちろん、解雇は常に解雇であり、勤続2年以上の従業員は不公正解雇を主張することができますが、「解雇と再雇用」は、ビジネス上の理由やしかるべき協議などがある限り、現在のところ公正に行うことができます。この方法を完全に撤廃することは、労働党によって利害バランスが、雇用主側から労働者側にさらに大きくシフトすることを意味します。

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