なぜ商業用不動産の家主はオフィスの用途変更を検討しているのか?
英国の全ての不動産は、商業用も住居用も様々な「用途クラス (use classes)」に区別されます。世界的なコロナによるパンデミック発生後、2020年9月にこれらの用途クラスが修正されました。英国政府が本変更を実行した主な理由は、各企業が小売業の環境の変化に柔軟に対応できるようにするためでした。
働き方の変更はオフィスの利用方法にどのような影響を与えたのか?
英国企業の大半は、今やハイブリッドワークまたは在宅勤務ポリシーを恒久的な措置としており、その結果オフィスの必要性や需要が減少しました。これによりオフィスの空きスペースが増え、家主は商業用不動産の収益性を確保するための他の方法を模索する必要性に迫られています。この問題に対処するために、家主は不動産に割り当てられた用途クラスの変更を検討する必要が出てくるかもしれません。
所有建物に認められた用途を調べるためにはどうすれば良いか?
自分が所有する建物に認められている実際の用途を知っている方もいれば知らない方もいるでしょう。残念ながら、このような情報を集約的にまとめて保存しているアクセス可能な登録機関は存在せず、この情報を確認するためには、宅地開発計画の履歴を調査しなければならない可能性があります。商業用リースには認められた用途が記載されている場合がありますが、これは必ずしも計画法の下で認可された用途というわけではありません。所有権証書や地方自治体の宅地開発計画課(開発計画の記録を保有している場合もあります)への問い合わせ、当該建物の過去の使用履歴など、さまざまな情報源を検討する必要があります。
オフィスの使用用途はどうすれば変更できるのか?
通常、用途クラスを変更しようとする場合には、計画承認(プランニング・パーミッション)を申請する必要があります。しかしながら例外もいくつかあり、一般的には、同じ用途クラス内の変更の場合は計画承認申請は必要ありません。例えば、カフェ (Class E(b))からオフィス (Class E(g))へ変更する場合は計画承認申請は不要です。しかしながら、 変更のために建築工事が必要な場合は、計画承認申請が必要になる可能性があるという点に注意してください。 既存の用途を変更する場合は、必ず事前に具体的な法的アドバイスや(実際の)計画に関するアドバイスを受ける必要があります。
用途クラスEとは何か?
用途クラスEとは、2020年9月に導入されたもので、以下を含む広い範囲の用途をカバーしています。
用途クラス |
用途 |
E(a) |
暖かい食べ物以外の商品の展示または販売 |
E(b) |
(主に)その建物内で消費される食べ物や飲み物の販売 |
E(c) |
以下の3つのサブクラスに分かれる · 金融サービス – E(c)(i) · 専門サービス(健康・医療関連サービスを除く)– E(c)(ii) · その他、商業、ビジネス、サービス領域で提供することが適切なサービス – E(c)(iii) |
E(d) |
インドアスポーツ、レクリエーション、フィットネス(モータービークルや射撃、スイミングプールやスケートリンクとしての使用を除く) |
E(e) |
医療または健康関連サービスの提供(コンサルタントまたは開業医の住居に付属する施設の利用を除く) |
E(f) |
保育所、託児所、デイケアセンター(居住用を除く) |
E(g) |
居住用エリアにおいてその設備を損わずに利用することのできる用途 管理・運営機能を実行するためのオフィス – E(g)(i) 製品又は製造プロセスの研究開発 – E(g)(ii) 工業プロセス – E(g)(iii) |
Town and Country Planning Use Class Order 1987 (as amended) に基づく様々なカテゴリーは Planning Portal website で確認できます。
開発許可の権利も存在し、これを行使すると、より迅速な「事前承認」プロセスに基づいて、公的な計画申請を行うことなく他の用途クラスに変更することが可能です。
オフィスから住居にその用途を変更することはできるのか?
オフィスから住居への建物の用途変更は、General Permitted Development Orderと2021年8月1日に施行された新しい「クラスMA」に基づいて行われることになります。このプロセスでは、より簡素化された事前承認申請が必要となります。クラスMAはオフィス(の変更)だけでなく、Class E内での他の用途(上表参照)への変更にも関係します。
クラスMAに基づいて居住用建物に用途変更をする際は以下の点に留意ください。
- その用途は必ず居住用でなければなりません。複数人が占有するシェアハウス (Houses in Multiple Occupation (HMOs))への変更は認められません。
- 対象の不動産は、事前承認を申請する前の最低3カ月間は空室でなければなりません。賃借人がいる場合は申請をすることが出来ません。
- 最低2年以上はオフィスとして使用されていなければなりません。
- 自治体がArticle 4 restriction(第4条制限)を行使し(自治体が開発許可の承認を撤回することを意味します)、用途変更ができなくなる場合もあります。
- 重要文化財建築物はクラスMAに基づいて用途を変更することは出来ません。
3CSにできること
所有不動産のオフィスビルに空室があり、テナント交渉に苦戦されている場合、計画策定の一手段として、上記の法律で認められた権利を検討することにより、住宅開発業者(または現在の選択肢にはもはや食指を動かさないエンドユーザー)に対してビルの市場性を高めることができる可能性があります。
商業用リースの場合は、リース不動産に認められた用途が明記されており、家主や既存リースの賃借人が現在の賃貸借契約の下で用途を変更しようとする場合は、既存の賃貸借契約について変更証書 (Deed of Variation)を締結し、すべての当事者が署名する必要があります。これは計画承認申請に加えて必要となります。
3CSは定期的に、用途変更を含む賃貸借契約の条件変更を望む家主や賃借人の方をサポートしています。不動産に認められた用途を特定したり、計画変更の必要性を調査することも可能です。
オフィスや商業用不動産の指定用途の変更の法的問題に関するより詳細な情報が必要な場合は、3CSまでお問い合わせください。