2024年デジタル市場、競争及び消費者法(Digital Markets, Competition and Consumers Act 2024/以下「DMCCA」)は、英国の競争法および消費者法に対して大幅な改正をもたらす法律であり、2024年に制定され、段階的に施行されます。本法は、デジタル市場における競争を強化し、消費者保護を拡充するとともに、競争・市場庁(Competition and Markets Authority/以下「CMA」)に対して、より強力な執行権限を与えています。
6月のニュースレターでは消費者保護の側面を取り上げましたが、本号では、競争法の観点から考察します。DMCCAの主要な規定をはじめ、戦略的市場地位(Strategic Market Status/以下「SMS」)制度や企業結合規制の厳格化、海外企業への影響、さらに企業が取るべき対応策について解説します。
DMCCAの概要
DMCCAは、英国競争法の運用体制に大きな転換をもたらす法律であり、主に大規模なデジタルプラットフォームを対象としています。本法により、CMAは、強い市場支配力を有するプラットフォームの規制、企業結合審査、不公正な取引慣行への対応を行うための、より強力な権限を持つことになります。施行は2025年から2026年にかけて段階的に進む予定であり、企業は今から新たな要件に備える必要があります。
大規模デジタルプラットフォームへのSMS義務
本法の主要な要素の一つが、SMS制度です。CMAは、英国市場において強固な市場支配力と戦略的重要性を持つデジタルプラットフォームをSMS企業として指定することができます。対象となるのは、通常、全世界売上高が250億ポンド超または英国売上高が10億ポンド超の大企業です。SMSに指定された企業には、公正な取引、透明性および選択の自由を確保するための行動規則が適用されます。これに違反した場合、全世界売上高の最大10%の制裁金が科される可能性があり、さらにCMAは相互運用性義務などの競争促進のための措置を課すこともできます。
企業結合審査制度の厳格化
DMCCAは、企業結合に関するCMAの審査権限を大幅に拡張しています。新たな基準として、一方の企業が英国における供給シェア33%以上かつ売上高3億5,000万ポンド以上を有する場合、他方の企業の英国での事業規模が小さい場合でも、CMAはその取引を審査することが可能となります。
また、SMS企業は、英国事業に関する取引額2,500万ポンド超の取引について、CMAに報告する義務を負います。これらの措置は、いわゆる「キラー買収(killer acquisition)」の防止を目的としており、海外投資家を含む企業にとって、英国関連の取引に要する時間やコストが増加することが予想されます。
海外企業におけるコンプライアンス上のリスク
DMCCAは、海外企業にも影響を及ぼします。
- 英国内で事業を行う大規模プラットフォーム提供事業者は、SMSに指定される可能性があり、データ管理、広告、手数料ポリシーなどの見直しが求められる場合があります。
- 輸出業者、Eコマース事業者、オンラインゲーム運営者など、英国の消費者に商品やサービスを提供する企業は、価格の透明性や公正なサブスクリプション契約条件など、より厳格な消費者保護基準を遵守する必要があります。
- 英国企業を買収する海外投資家は、審査手続きの長期化に直面する可能性があり、報告義務に違反した場合には多額の制裁金を科される恐れがあります。
英国市場と関わる企業は、自社のリスクを把握した上で、業務慣行が英国法に適合しているかを確認することが重要です。
企業が取るべき対応
企業は、次のような対応を進めておくことが推奨されます。
- SMS指定の基準およびCMAの運用方針について、法的助言を受ける。
- 広告、価格設定、データ利用に関する社内方針を見直し、透明性を確保する。
- 契約書や取引条件を精査し、英国消費者法への適合性を確認する。
- M&Aにおけるデューデリジェンスおよび競争法上のクリアランス取得対応を、取引スキームに組み込んでおく。
3CSにできること
DMCCAは複雑な法律ですが、3CSはその内容や影響を理解し、適切に対応するための支援を行っています。当事務所の経験豊富な商法チームは、SMS企業として指定された場合のリスクや契約条件の適法性対応、企業結合審査への対応などについて、実務的なアドバイスが可能です。
DMCCAが貴社の事業にどのような影響を及ぼす可能性があるかについてご相談をご希望の場合は、いつでも担当弁護士までお問合せください。3CSは、貴社が法令遵守と競争力の両立を実現できるようサポートいたします。




