雇用審判制度には問題があります。それは、膨大な未処理案件です。3CSでは、長期の審理が現在では2029年、さらには2030年にまで指定される案件を確認しており、これまでになく深刻化しています。この危機的状況はどのようにして生じ、どのような対応が可能でしょうか。

最近の統計によると、雇用審判制度は現在の案件数に対応しきれておらず、予定された審理日までに数年もの遅れが生じている案件もあります。審理までの待機期間は多くの場合12~18か月ですが、複数日にわたる審理を要するより複雑な案件では、4–5年先まで日程が決まらないこともあり、すでに2030年に予定されている審理もあります。

雇用に関する司法へのアクセスを支援する慈善団体であるWork Rights Centreは、「Employment Tribunals in crisis: The blind spot in the ‘New Deal for Working People’(危機に瀕する雇用審判所:「働く人々のための新政策」の死角)」という報告書を公表し、2025年12月時点で、判決待ちの雇用審判案件が65,000件を超えたと指摘しています。これは過去12か月で43%の増加です。

影響を受けているのは審理だけではありません。審判所による案件の日常的な処理や案件管理も大きな打撃を受けています。

2025年雇用権利法(Employment Rights Act 2025、以下「本法」といいます)の施行により、この問題はさらに深刻化する見通しです。本法は労働者により多くの法的保護を与えるものであり、その結果、司法制度における申立件数はさらに増加することになります。

現在の雇用審判所の遅延の原因は何か?

長年にわたる英国政府による予算不足により、司法制度の資源不足が深刻化しており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックもその状況を悪化させました。2020年および2021年のロックダウンやソーシャルディスタンスの確保の要請により、未処理の申立てが大量に積み上がり、審判制度はその処理に苦慮しています。

需要が増加しているにもかかわらず、法務大臣は雇用審判所の処理能力を削減しました。The Bureau of Investigative Journalism(調査報道局)の報道によれば、今年の予算は34,590日分であり、2年前より1,000日分少なくなっています。

英国政府は、本法により雇用審判所の案件が毎年6,900件増加する可能性があると試算しています。

本人訴訟を行う従業員も、手続きの進行を遅らせる要因となり得ます。申立人がAIを用いて案件準備を行う場合、簡潔な申立書ではなく、その案件のあらゆる側面を網羅した、何ページにも及ぶ書類が作成されることがあります。

つまり、雇用審判所の申立てを審理する担当者は、各案件において処理すべき書類の量がはるかに多くなります。

司法省の回答

司法省は次のように述べています:

「我々は雇用審判所に対する負荷を認識しており、未処理案件を解消し、効率性を高め、より迅速な司法の実現に向けて取り組んでいます。

その取り組みには、審理日数の最大化、雇用審判官の増員、適切な場合におけるオンライン審理の活用、新しいデジタルシステムへの投資が含まれます。」

制度改革の可能性

雇用審判所への負担を軽減するためには、今や抜本的な改革が必要であるとの見方が雇用法弁護士の間でますます広がっています。雇用法のベストプラクティスを促進するために設立されたEmployment Lawyers Associationは、最近、「トラック」制度を提案しました。これは、軽微な案件は雇用審判所の職員が扱い、より複雑な案件を審判官に委ねるという仕組みです。

また、雇用上訴審判所で行われているように、見込みのない、または投機的な申立てを早期段階でふるい落とす強力な「選別」手続を提案する意見もあります。

政府は、こうしたより抜本的な方法で審判制度を改革する計画を発表していません。

雇用主が雇用審判案件を回避するには

審判所への申立ては、可能な限り避けることが望ましいでしょう。

明確かつ堅実なポリシーを整備しておくことで、紛争の発生を減らすことができます。管理職は、早期に問題を特定する方法と、問題を効率的に処理するために必要な手順について把握しておくことが理想的です。従業員が自分の抱える問題を真剣に受け止められていると感じられるようにすることは、法的措置を回避する上で大いに役立ちます。

問題が発生した場合、早い段階で法的助言を求めることで、雇用主は訴訟に発展することなく問題を解決できる可能性を最大限に高めることができます。

訴訟が開始されたかどうかにかかわらず、和解合意など受け入れ可能な解決策を見つけるための交渉はいつでも行うことができます。

歴代政府はさまざまな方法で申立ての和解を促してきました。現在の方法では、すべての審判案件において、申立人にまずAcas(労働紛争の解決を目的として設立された政府機関)が提供する早期調停のサービスを受けることを義務付けています。当事者が和解に真剣であれば、その段階で和解に至ることで、時間と費用を節約することができます。

もう一つの方法は司法調停であり、これは審理を経ずに案件を解決するために審判所が提供する無料のサービスです。また民間の代替的紛争解決手段を利用することも可能です。

3CSにできること

3CSの雇用法に精通した弁護士は、雇用紛争への対応について専門的な助言とガイダンスを提供し、従業員からの申立てリスクを軽減する支援を行います。

新たな法制への対応についてアドバイスまたはガイダンスをご希望の場合は、お気軽にお問合せください。

John Clinch

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