1974年労働安全衛生法上、雇用主は、職場における健康へのリスクを軽減するための合理的で実行可能な措置を講じる義務があります。自分自身と職場にいる他の人々を守るため、従業員にCovid-19 のワクチン接種を奨励することはそのようなリスクを減らす一つの方法ですが、雇用主はどの程度まで推奨できる、またはすべきでしょうか。
何が問題なのでしょうか?
Covid-19 の感染や、感染した場合の重症化のリスクが軽減するため、出来る限り多くのスタッフがワクチン接種をすることが望ましいことです。ワクチン接種をしていないスタッフが職場にいる場合、それが医学的な理由であれ、自分で選択したものであれ、重篤な病気にかかるリスクや、職場でのウイルス感染のリスクが高くなるため、理想的とは言えません。
従業員にワクチン接種を義務付けることはできますか?
これはお勧めできません。ワクチン接種の義務化は、政府の規制のもと、一部の限られた医療・介護の現場にのみ適用されます。少数の人々にとって、ワクチン接種は医学的に不可能ですが、それ以外の全ての人にワクチン接種を義務化しようとする場合、接種を拒否した従業員を懲戒または解雇することに関連する重大なリスクを伴うでしょう。リスクには、勤続2年以上の従業員からの不公正解雇の請求や、2010年平等法における保護特性(年齢、身体障害、哲学的信念など)を持つ従業員からの差別請求の可能性などです。
従業員にワクチン接種状況の詳細を共有してもらうことはできますか?
はい、可能性はありますが、これには特別なカテゴリーの健康情報の収集が含まれるため、考慮すべきデータ保護の問題があります。ICO(英国個人情報保護監督機関)は、ワクチン接種状況の情報を収集している組織に対して、この情報の収集が特定の目的のために必要かつ適切でなければならないことを確認するアドバイスを発表しました。情報を収集する正当な理由がある場合、その情報を処理する合法的な根拠があると言う事になります。ウイルスの蔓延を防ぎ、従業員に対する注意義務を遵守することが、このデータを処理する正当な理由になる可能性があります。ワクチン接種状況に関する情報を収集する際には、一般的なデータ保護義務も遵守していることを確認する必要があります。
従業員が情報提供を拒否した場合はどうすればよいでしょうか?
ワクチン接種状況についてスタッフに尋ねることは、合理的な管理命令である可能性が高く、雇用主は回答を拒否した従業員を懲戒することができる可能性があります。しかし、それぞれのケースは事実によって異なります。例えば、医療従事者はコロナウイルスにさらされる可能性が高く、他の人に感染させる可能性も高いため、雇用主は医療従事者にワクチン接種を受けたかどうかを尋ねることを正当化できるはずです。スタッフの他者との接触が限られている雇用主は、正当化することが難しいかもしれません。情報開示請求に応じない従業員に対して懲戒処分を行う場合は、事前に法律相談を受けることをお勧めします。
従業員が予防接種を受けていないことを明らかにした場合はどうすればよいでしょうか?
既存のコロナウイルスリスクアセスメントは、スタッフのワクチン接種状況を反映して更新する必要があります。またリスクアセスメントには、従業員の安全衛生を守るために、従業員が完全にワクチンを接種する代わりとなる安全措置を含む必要があります。これには、在宅勤務の継続、検査、社会的距離、個人用保護具(PPE)の使用、手洗いなどが含まれるでしょう。
ワクチン接種をしていないスタッフと接種したスタッフとで扱いを変えてもよいのでしょうか?
医学的な理由でワクチン接種を受けられない人もおり、それらの人を不利に扱うことは障害者差別のリスクとなります。しかし、中には正当な理由もなく、一般的な、あるいは特にCovid-19のワクチン接種に反対する人もいます。 彼らがワクチン接種を義務付けることや、ワクチン接種していないことを理由に不利な扱いをすることに意義を申し立てる場合、哲学的信念に基づく差別だと主張するかもしれませんが、そのような主張は検証されていないため、慎重なアプローチが推奨されます。
慎重なアプローチとは、ワクチン接種をしていない従業員に対して、他の従業員の安全衛生を確保するための適切な手段として正当化できる措置をとることです。 例えば、ワクチン接種をしていない従業員はウイルス感染のリスクが高いと考えられるため、職務内容を変更したり、自宅待機(可能な場合は在宅勤務)、出社前にラテラルフローデバイスでの検査が陰性である証拠を提示することを要求することが考えられます。