従業員が苦情申立てを提出しました。全20ページに及び、14の法令を引用し、どこを探しても見つからない6件の判例に言及し、32件の個別の違反を主張した上で、17種類の異なる救済措置を求めています。雇用主は、それがAIを使用して作成されたものではないかと疑っています。
どのように対応すべきでしょうか。
AIは、不正確な法的分析、重複、場合によっては架空の法的根拠を含む長文の書類を作成することがあります。しかし、AIの使用によって、雇用主による苦情申立てへの対応方法が根本的に変わるわけではありません。
重要なのは作成方法ではなく内容
雇用主が苦情を真摯に受け止めるために、従業員がその法的根拠を特定する必要はありません。例えば、2010年平等法(Equality Act 2010)の条項を誤って引用していたとしても、その根底にある苦情を単に退けるべきではありません。
雇用主は、何が起きたのか、また、その事実から何らかの法的問題が生じるかを確認すべきです。同様に、従業員が実在しない判例を引用していたとしても、その根底にある事実上の主張を理解し、調査できるのであれば、その判例の引用に反論することに大きな意味はありません。
苦情申立ては、雇用審判所における訴答書面ではありません。雇用主は、苦情の内容を特定し、どのように調査すべきかを判断する必要があります。
すべての主張について調査を行う必要があるか
必ずしもそうとは限りません。AIで作成された苦情申立てでは、1つの出来事が複数の個別の主張であるかのように見える場合があります。従業員が同じ出来事について、差別、ハラスメント、不利益取扱い(victimisation)、契約違反およびみなし解雇(constructive dismissal)に当たると説明する場合があります。しかし、それによって必ずしも、5件の別々の調査が必要となるわけではありません。
雇用主は、まず事実を明らかにした上で、どのような法的問題が生じているかを検討すべきです。Acasの行動規範では、雇用主が事実を明らかにするために必要な調査を実施することが求められていますが、すべての法的主張を独立した事実上の主張として扱うことを要求しているわけではありません。
どのような場合に内容の明確化を求めるべきか
苦情申立ての内容が広範、または不明確なため、何が主張されているのかを雇用主が合理的に判断できない場合は、従業員に明確化を求めるべきです。ただし、これが手続上の障害となってはなりません。従業員は、実際に抱えている苦情を整理するために、AIを利用したにすぎない可能性があります。
雇用主はどの程度迅速に対応しなければならないか
すべての苦情申立てについて、一定の日数以内に手続を完了させることを求める一般的な法律上の要件は存在しません。雇用主は、自社の苦情処理手続に従い、不合理に遅滞することなく苦情申立てに対応すべきです。Acasは、可能な限り、5営業日以内に苦情申立てに関する面談を実施することを推奨しています。
より複雑な苦情申立てには長い時間を要する場合がありますが、従業員には進捗状況を継続的に知らせるべきです。
AIで作成された証拠についてはどうか
AIはメールを誤って解釈したり、暫定的な記述を確定的な主張であるかのように変換したりする場合があります。雇用主は、重要な主張について、その根拠となる証拠と照らし合わせて確認する必要があります。
従業員が会社の機密情報、個人データまたは顧客の資料をAIシステムに入力した場合、それ自体が秘密保持、データ保護または情報セキュリティに関する別の懸念を引き起こす可能性があります。
雇用審判所への申立期限を忘れないこと
社内での苦情処理手続が進行しているからといって、それだけで雇用審判所への申立期限の進行が停止するわけではありません。2026年10月1日以降、雇用審判所へのほとんどの申立てに適用される通常の申立期限は、3か月から1日を差し引いた期間から、6か月から1日を差し引いた期間に延長されました。苦情申立てに時間がかかるからといって、その対応に6か月かけられると考えるべきではありません。
雇用主が実務上留意すべきポイント
雇用主は、以下の対応を行うべきです。
- 苦情の実質的な内容の特定
- 事実に関する主張と法的結論との区別
- 公正な判断を下すために合理的に必要な事実の調査
- 必要に応じた内容の明確化の要求
- 不合理に遅滞することのない苦情申立てへの対応
最も重要なことは、不適切に作成された苦情申立てと、無効な苦情申立てとを混同しないことです。取り組むべき課題は変わりません。苦情の実質的な内容を特定し、事実を明らかにした上で、公正かつ合理的な判断を下すことです。
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